『社会人基礎力』とは、読んで字のごとく社会人が基礎的に備えておくべき能力のことです。
経済産業省によって「職場や地域社会の中で多様な人々と共に仕事を行っていくうえで必要な基礎的な能力」と定義された「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで働く力(チームワーク)」の3つの能力の総称です。
そして、その「3つの能力」は、さらに「12の能力要素」から成り立っています。
経済産業省が企業向けに行った「社会人基礎力に関する緊急調査」では、9割以上の企業が新卒採用や人材育成において「社会人基礎力」を重視していると回答しています。
近年、我が国の産業社会を取り巻く環境は大きく変化しており、国内市場の成熟化やグローバル競争の激化により商品サイクルの短期化がもたらされ、企業は「新しい価値のある商品やサービスをいかに早く創り出すか」が強く問われるようになりました。
また、IT化の進展に伴い、資料配布やデータ集計といった職場における単純な作業は、機械化や自動化が進み、企業の若手に対しても、当初から難易度の高い仕事が期待されるようになります。
社会において何らかの意義ある役割をはたすことが求められる社会人が、課された役割や仕事をこなすとき、指示待ち人間、マニュアル人間、一匹オオカミでは周囲の人をあきれさせ、困らせてしまいます。
指示待ち人間ではなく『前に一歩踏み出せる力』を備えたい。
マニュアル人間ではなく『考え抜く力』を持ちたい。
一匹オオカミではなく『チームで協力する力』を身につけたい。
さもないと組織や地域において周囲から評価されず、自分の位置を確保するのに苦労します。
現に周囲を見渡すと、学力は決して低くないのに、仕事の成果が上がっていない人がいます。
それなりに頑張っているのだが、いつの間にか周囲から浮いてしまう人がいます。
決して悪い人ではないけども、一緒には仕事したくないような人もいます。
そうした人々には、どこか社会人基礎力が欠けていることがあります。
他方で、学力が必ずしも高くなくとも、周囲と調和を取りつつ、目覚しい活躍を見せる人は沢山います。
人の社会での活動には、思いやりや公共心、倫理観、基礎的なマナー等の「人間性、基礎的な生活習慣」の土台がまず必要です。
社会人基礎力は社会関係を築くうえで必要とされる能力であり、社会関係の中でこそ育まれ、この種の能力には社会関係や人間関係で揉まれた経験が役立ちます。
だから学校で課題を個人的にこなす能力しか磨いてこなかった人には、どうしても不足しがちになるのです。
従来「自然に」それらの能力を磨く場として存在してきた家庭や地域社会の教育力が低下し、部活動や集団活動への参加が低下するなどにより、若者の間で、このような基礎的能力のばらつきが拡大し、またそのような能力と学力との相関関係が弱くなっていることも指摘されるようになりました。
それゆえ、子供時代から社会に出たての若手時代までの間に、学力・体力だけでなく、社会人基礎力もまた、意識的に育成し、積極的に評価していく必要があります。
今の学校教育や若手社員教育は、この課題にうまく応えているでしょうか。